「スキルは高いのにいまいちパワーがない」「自分より大きい相手にあたり勝ちたい」
スポーツをしているとそんな風に悩むことありませんか?
スポーツ現場では「パワーが足りない」という言葉をよく耳にします。
でも実際は「パワー」とは何か指導者や選手の認識がぼんやりしていることが多いです。
この記事では、パワーとは何か、筋力との違い、パワーを向上させる方法について解説していきます!
NSCA‐CSCS、CROSSFIT‐Level1等のトレーニング資格を活かしながら大学、高校ラグビー部、高校空手部のS&Cコーチとして活動しています。
現場での体験やエビデンスを踏まえながら、トレーニングや栄養に関する知識を共有していきます!
1. パワーとは?スポーツにおける「パワー」の重要性
パワーとは
パワーは、「単位時間当たりの仕事量」と定義されます。わかりやすくすると「大きな仕事を素早く実施する能力」のことです。例えば重たいバーベルを頭の上まで素早く上げる、物や体を素早く遠くまで移動させる能力のことを言い、力×速度=パワーで表します。
スポーツにおいては、パワーは非常に重要な要素です。サッカー、バスケットボール、野球など、あらゆる競技で瞬間的な加速や跳躍、強いシュートやスローが必要とされます。これらの動作には筋力が求められますが、それを短い時間で最大限に引き出す「パワー」がなければ、思うような結果が得られません。
筋力とパワー
「筋力が強い=パワーがある」はよくある勘違いです。パワーは「力」×「速度」なので高負荷のウエイトトレーニングをして筋力が上がっただけではパワーの向上にはつながりません。筋力は大きな力を発揮するとき速度が遅く、速度が速いと大きな力が発揮できないという特性があります。トレーニングで向上した力を素早く発揮するためのトレーニングがパワー向上には必要になります。
パワーを向上させるには
パワーを向上させるためには、筋力と速度の両方を鍛える必要があります。筋力トレーニングだけでは筋肉の力を高めることはできますが、それを瞬間的に発揮できるようにするためには、スピードを伴った動作が必要です。
「ウエイトリフティング」や「プライオメトリクス」と呼ばれる筋ができるだけ短い時間内に最大の筋力に達することができるようにするトレーニングが効果的です。バーベルを素早く動かしたり、メディシンボールを投げる、ジャンプ系の動作など自身が普段取り組んでいるスポーツの特性に合わせて実施するのがポイントです。
2. パワーが向上するとスポーツパフォーマンスにどんな効果があるのか?
パワー向上が競技力に与える効果
パワーが向上すると、競技におけるパフォーマンスは大きく改善されます。多くのスポーツは、瞬間的に大きな力を発揮する場面が数多くあります。例えば、サッカーではシュートやスプリント時の爆発的な加速、バスケットボールではリバウンド時の跳躍、野球ではバッティングやピッチングの瞬発力が求められます。コンタクトスポーツではコンタクトの瞬間に相手に伝わるインパクトが向上しあたり負けない、強く素早い打撃ができるといった効果があります
ラグビーで例えると南アフリカ代表のファフ・デクラーク選手は小柄な体格ですが自分よりも大きな選手にガツガツとタックルをして倒します。パワーが向上すればそんなプレーが可能になります。
瞬発力や動作のスピードに対する影響
卓球やバトミントン、伝統派空手など、一見すると力があまり重要視されずらい競技においてもパワートレーニングは効果があります。例えばステップワーク中の方向転換やラケットのスイング、突きや蹴り等は、重力や慣性の法則で進行方向に発生している力に反発してその動作・仕事が実行されています。高いパワーがあれば素早い方向転換や、攻撃動作が可能となるためコンタクトの伴わないハイスピードの種目でもパワートレーニングは効果的です。
3. パワーの測定方法:どのように自分のパワーをチェックするか?
パワーの測定方法(垂直跳び、スプリントなど)
パワーを測定する方法は、垂直跳びや立ち幅跳びウエイトリフティング、バイクのパワー測定等があります。チームの経済状況やスポーツ、ポジションの特性に合わせて測定を行うことがおすすめです。ジャンプやバイクのパワーテストの結果が陸上競技のスプリントやアルペンスキーのパフォーマンスなど、様々な競技でパフォーマンスと相関関係があると研究で認めれています。
チームで実施しているパワーテスト
私が指導しているチームでは、定期的に筋力や持久力と合わせてパワーの測定を実施しています。大学ラグビーではWatt Bikeという自転車様の器具を用いた6秒間の最大パワーテストと立ち幅跳び、高校空手道部では立ち幅跳びの測定をパワーテストとして実施しています。社会人チームやトレーニング設備が整ったチームでは、スピードや「RFD」という力の立ち上がり速度を示すものを、「光電管」「VBT」というデバイスを使用して計測しているチームも多くあります。
チームで実施している測定について簡単に紹介します。
ワットバイクの6秒最大パワーテストでは6秒間の全力ペダリングののち発揮された平均パワー(w)とピークパワー、その他回転数等様々な数値が画面に表示されます。自身のチーム選手(大学ラグビー部)では900~1400wの記録が出ますが、リーグワンや社会人のラグビーチームだと2000wや自転車の短距離選手では2500wものパワーがでます。
立ち幅跳びは高価なデバイス等が不要で簡単に測定できるため学生アスリートに非常におすすめなパワーの測定方法です。記録を自身の身長と比較した身長比を見てパワーの評価をします。身長比のスコアが1.65以上であれば高いパワーを持っているといえます。距離では280㎝を超えられればラグビーセブンス代表ばりの高いパワーがあるといえます!
4. パワーを向上させるための効果的なトレーニング方法
プライオメトリクスやオリンピックリフティングの紹介
パワーを向上させるためには、プライオメトリクスやオリンピックリフティングといった専門的なトレーニングが効果的です。
- プライオメトリクスは、瞬発力や反発力を高めるために行います。ここでは詳しく説明しませんが「SSC(ストレッチーショートニングサイクル)」という筋肉の活動を含む反動動作等を用いた素早くパワフルなトレーニングを指します。ジャンプスクワットやボックスジャンプは、筋肉を素早く収縮させる力を鍛えるため、パワーの向上に繋がります。メディシンボールを使えばさらにバリエーションも広がり全身のパワーを鍛えることができます。
- オリンピックリフティングは、全身の筋肉を使って重量を素早く持ち上げる動作を繰り返すトレーニングです。特に「クリーン」や「スナッチ」といった種目は、爆発的なパワーを発揮するのに優れています。動作が難しく、テクニックの習得には時間がかかりますが、専門家から正しく学びトレーニングを実行すればパワー向上に非常に有効なトレーニング手段です。
これらのトレーニングを行うことで、筋力とスピードを同時に鍛え、パワーを向上させることができます。
トレーニングメニューと実践例
パワーとレーニングの実践例として、「ジャンプ系」「メディシンボール」「バーベル種目(ウエイトリフティング」のおすすめトレーニングを紹介します。
ウォーミングアップやウエイトトレーニングの際に取り入れて継続的に実践する事で瞬発力、パワーの向上が実感できるかと思います。
アンクルホップ→タックジャンプ→シングルレッグタックジャンプ
- 足首を固めて地面を強くたたく
- 接地時体幹部が波打たないよう1本の棒をイメージ
- 腕を大きくリズムよく振る
MB(メディシンボール)スラム
- 動作のフィニッシュ時に体がぐらつかないように体幹部に力をいれ安定させる。
- 頭上から素早く、強くMBを振り下ろす
MBスロー
- 腕だけでなく全身をつかって遠くに投げる
- スクワットをイメージして股関節を引き込む
おすすめのメディシンボールについてリンクを貼っておきます!
ニシスポーツ メガソフトメディシンボール NT5813B 径35cm 3kg 価格:8349円 |
ソフトメディシンボール 5kg 直径35cm やわらかいので全身トレーニングに トレーニングボール ウエイトボール LINDSPORTS リンドスポーツ 価格:5600円 |
ハイプル
- 挙上時に体幹部を安定させる(沈み込む動作でスナッチやクリーンの習得、体幹部の安定につながる)
- 上半身をむやみに使わず下半身の力で素早くバーベルを浮かせる
- 足首・膝・股関節を素早く伸ばす(地面を強く踏んで爆発的にジャンプ!)
競技特性、年齢、トレーニング習熟度等を考慮してトレーニングに取り入れてみてください。
まとめ
- パワーとは大きな仕事を素早く実行する能力、力×速度=パワー
- パワーが向上すれば、コンタクトで相手にあたり負けない、素早い方向転換や強いインパクトが可能になる!
- パワーはバイクや専用の機材で測定、立ち幅跳びや垂直跳び等でも計測することができる
- プライオメトリクス、ウエイトリフティング、MBトレーニング等がパワー向上におすすめ
最後までお読みいただきありがとうございました。パワーは、スポーツパフォーマンスを向上させるための重要な要素です。パワーを高めるためには、筋力とスピードの両方をバランスよく鍛える必要があります。また、測定やトレーニングを通じて、自分の進捗を確認しながら取り組むことが、効果的なパワー向上のカギです。
アスリートやスポーツを楽しみたい方に向け、オンラインや対面でのトレーニング指導を行っておりますのでご気軽にお問い合わせください。ブログやSNSでの質問もお待ちしております!
参考文献
三本木温, and 黒須慎矢. “陸上競技選手における 30m 走の疾走能力と無酸素性パワーおよび柔軟性との関係.” 八戸大学紀要 42 (2011): 57-64.
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