アイソメトリックトレーニングの効果、スポーツ・学生アスリートに対する活用

Training

アイソメトリックトレーニングの活用

秋はいろいろな学生スポーツのシーズンが終了してオフシーズンに入る季節ですね。

新チームが始まったけど、オフの期間の初めのトレーニングってどんなことをすればいいのか迷いますよね。

今の時期に体を大きくしておきたいし、今後のトレーニングのためにトレーニング面も良いスタートを切りたいと悩む指導者の方は多いんではないでしょうか。

そこで今回はオフシーズン初期、トレーニング初心者(ジュニアアスリート)におすすめな「アイソメトリック」トレーニングについて紹介していきます。

アイソメトリックトレーニングとはどんなトレーニングなのかを解説した後、実際に現場で活用できるよう、おすすめのトレーニングも紹介していきます!

とりあえずがっつり筋トレさせておけばいいや、と思っている方も一度目を通していただけると嬉しいです!

こんな人におすすめ!

・自身で筋力トレーニングを考えているアスリート

・中学・高校の部活動の先生

・これから現場に出てトレーニング指導を行うトレーナー

筆者
筆者

NSCA‐CSCS、CROSSFIT‐Level1等のトレーニング資格を活かしながら大学、高校ラグビー部のS&Cコーチ、パーソナルトレーナーとして活動しています。

現場での体験やエビデンスを踏まえながら、トレーニングや栄養に関する知識を共有していきます!

アイソメトリックトレーニングとは

アイソメトリックトレーニングとは、筋肉の長さが変わらない状態で筋力を発揮するトレーニングのことを言います。

体を動かしたり、物を動かす時、筋肉は主に3つの動きをします。

筋肉が縮みながら力を発揮するコンセントリック「短縮性筋収縮」

筋肉が伸ばされながら、筋力が発揮されるエキセントリック「伸張性筋収縮」

筋肉の長さは変わらず、筋力が発揮されるアイソメトリック「等尺性筋収縮」

アームカールでの上腕二頭筋の動きで例えると、持ち上げる局面はコンセントリック、ゆっくりと下す局面はエキセントリック、もし途中でキープすればエキセントリックとなります。

ボディメイクや一般的なトレーニングではコンセントリック、エキセントリックに注目されがちですが、アイソメトリックはスポーツを行うアスリートや学生にとってはとても有効なトレーニングです。

アイソメトリックトレーニングの利点・効

アイソメトリックトレーニングの利点と効果については下記のようなものがあげられます。

具体的に考えていきましょう。

初心者にも安全

比較的簡単で指導に時間がかからない

MAX筋力が出しやすく、神経系の発達が望める

疲労をためない

初心者にも安全

筋力トレーニングを実施した際、に重要視したいのは実施する種目のリスクです。

私は普段安全・効果・効率の順でメニュープログラムを考えていますが、アイソメトリックトレーニングはその点でとっても優等生です!

例えば筋力を上げたくて自身の筋力に見合わない重量でウエイトトレーニングをしてしまうと重りが落ちてきたり、体勢を崩して怪我につながることがあります。

アイソメトリックトレーニングでは、動かす対象が固定されている、または自分自身も動かないため、そういった危険性がなく安全に実施できます!

比較的簡単で指導に時間がかからない

初めてトレーニングを指導する際、最初のポジション、体の動かし方、代表的なエラー、ポイントなど、そのトレーニングについて教えることがたくさんありますよね。

アイソメトリックトレーニングには動作が伴わない為、難しいテクニックが必要なくそれらの説明がとてもシンプルです。

実施するポジションやポイントを説明してしまえばあとは本気で「押す・引く・耐える」のみ!!

学生同士で実施する際も、その姿勢等を評価すればいいため大人数の指導でも一度インストールしてしまえばウエイト等を使用したトレーニングよりも比較的簡単に実施できます。

MAX筋力が出しやすく、神経系の発達が望める

筋力トレーニングで最大筋力を向上させようと思うと3~6RM程度の高負荷でトレーニングを実施するのが良いとされています。

ですが初心者やリハビリ途中の方は高い負荷で運動すると危険が伴い、実施が難しいです。

また自身の持つ力を本気で出すという経験が乏しいため、競技や1RMの測定等で爆発的に力を発揮するということがなかなか出来ないことがあります。

アイソメトリックトレーニングでは自身が本気で力を入れてもその対象の物が壊れたり、自分自身が怪我をするリスクがほとんどない為、MAXパワーを出しやすいです。

これらの心配がなくなると、トレーニングに飽きてきた、もしくはよっぽどサボりたい気持ちがあったという場合でないと大抵本気になってくれます。

小さいころ握手をするとき、「本気で握ってみて」などとふざけて言われると、皆さん本気で手をにぎったでしょ??笑

疲労をためない

アイソメトリックトレーニングは筋の長さが変化しないため、他の収縮よりも比較的疲労がたまりずらいです。

トレーニングで筋肥大等の効果を出すには、いかにトレーニングで筋組織を破壊するかがポイントですが、アイソメトリックトレーニングを実施する際は目的が違います。

トレーニングのテクニックが身についておらず、競技的にもまだまだ成長段階な選手にはいきなり高負荷で疲労の溜まるようなトレーニングを実施するのはそのトレーニングはもちろんその前後の練習などにも支障が出るため、アイソメトリックトレーニングをうまく活用することでその心配は軽減されそうです。

具体的な活用例

アイソメトリックトレーニングを取り入れるべきおすすめのタイミングや対象者は下記の通りです

それぞれ解説していきます

  • オフシーズンの初期
  • リハビリテーション
  • トレーニング初心者

オフシーズンの初期

アスリートのトレーニングピリオダイゼーションを考えた時、試合期になると競技の練習が増え、筋力トレーニングを実施する機会が減ってくると思います。

またシーズンが終了すると、そのカテゴリーにもよりますが長期のオフやリカバリーの時間を設けることが多いです。

上記のようなトレーニングの感覚が鈍っている状態、体が訛っていて負荷に対する耐性ができていない状態に、ガンガン高負荷のMAXストレングストレーニングを実施するのは危険です。

そんな時にトレーニングの準備という意味でも、アイソメトリックトレーニングは効果を発揮します。

怪我のリスクは最小限に、自身の筋力を最大限発揮する感覚を取り戻す若しくはつかむことができます。

リハビリテーション

アスリートのリハビリテーションは、関節可動域の回復を目指しつつ、筋力が怪我前と同様に発揮できるようトレーニングをしていかなければなりません。

アイソメトリックトレーニングは動作を伴わない為、関節の角度や筋の長さを変えず力を発揮するというトレーニングが可能になります。

これは関節の可動域が回復しきっていない選手や、ウエイトトレーニングをするには筋力面でまで不安がある選手に有効だと言えます。

トレーニング初心者・ジュニアアスリート

トレーニング初心者やジュニアアスリートは、自身の全力を出す経験が乏しくその感覚に脳も慣れていないことが多いです。

安全な環境でそれを経験させることができれば、今後の競技パフォーマンスの向上も望めますし、トレーニングにおいてもその後のトレーニングで全力を出しやすいです。

またいろいろな動作を伴うトレーニングを一気に教えても吸収しきれないことが多いので、次のセッションではポイントを全然覚えておらず説明に時間がかかるというケースもあります。

アイソメトリックトレーニングはその点とてもシンプルで教えるのに時間がかからない為、トレーニング初期に選手たちが難しいことを考えすぎず筋力を発揮してトレーニングができます。

おすすめの種目

アイソメトリックトレーニングと聞いてほとんどの方がプランクや空気椅子などの持久力や安定性の獲得を目的としたトレーニングを思い浮かべると思いますが、この記事ではストレングス強化に使えるアイソメトリックトレーニングを紹介していきます!

アイソメトリックスクワット

〇トレーニングの王道、スクワットをアイソメトリックで実施しています。

フォームに関してはスクワットと同様、バーベルの位置は、目的に応じた膝の角度になるようセッティングするのが望ましいです。

スプリント等や下肢のパワー発揮が目的であれば膝の角度が120~130度で実施するのが理想です!

アイソメトリックベンチプレス

上半身のプレス動作を強化したいなら、アイソメトリックベンチプレスがおすすめです。

トレーニング初心者でなかなかベンチプレスの記録が伸びないという選手にもおすすめ

バーベルを押す力の反力が自身にかえって来るため、個人的には背中、肩甲骨でベンチを押す感覚がつかみやすいと感じています!

スレッドプッシュ(壁でも可)

アイソメトリックのスレッドプッシュは、垂直方向に加えたパワーを水平方向に伝えるという点で、スプリントや、ラグビーのスクラム、タックル等ととても特異的ですね!

押すだけでなくTRXなどを使用して、パワーポジションで思い切り引くということもできます!

動画は両足を引いてスレッドを押していますが、サッカーや格闘技、陸上選手が実施する場合スプリットスタンス(足を前後に開く)でスプリントフォームをイメージして行うのがおすすめです!

現場での使い方と注意点

プログラムの作成

アイソメトリックトレーニングを取り入れる際はオフシーズンの最初の2週間程度で実施すると選手もトレーニングの感覚がつかめます。

様々なポジション、種目で3~5秒の実施を3~5セット実施してください。

プランク等の低強度なアイソメトリックでは10秒以上と続けて問題ありませんが、ウエイトを使用して最大出力で筋発揮しようとすると呼吸がとまる無酸素運動になりますので6秒以上の実施はあまりおすすめしません。

またスポーツ動作に置いてもじわじわと最大筋力を発揮するという場面はほとんどないので5秒以内の短い時間で実施するのがおすすめです!

長期間にわたっての使用はおすすめしない

アイソメトリックトレーニングは非常に有効なトレーニングですが、通常のエキセントリック、コンセントリック筋活動をともなうトレーニングと比べて、筋肥大や筋力、筋持久力アップの効果が薄いです。

オフシーズンから試合期のすべてのシーズンを通して積極的にプログラムに組み込むのはあまりおすすめできません。

実施の際は全力で

今回紹介したトレーニングは全力で実施しなければ全く効果が望めません。

アスリートの中にはトレーニングが好きではなくジムではあまり一生懸命取り組めない選手ももちろんいます。

きちんと理由や目的を明確にし、それを言語化して伝えることで、本人がなぜそのトレーニングをやるか理解してもらうことが重要です。

まとめ

〇アイソメトリックトレーニングは「等尺性筋収縮」筋肉の長さが変わらない運動!

〇初心者にも安全、簡単でおすすめ、最大筋力の発揮や神経系の発達が見込める!

〇オフシーズンの始めや、リハビリテーション、トレーニング初心者に実施がおすすめ!

〇3~5秒を3~5セット、全力で行うことがポイント!

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回はアイソメトリックトレーニングについてその効果や利点、現場での活用ほうほうについて解説しました。

日本のYouTube動画などではあまり紹介されていない内容なので、記事をみながらぜひ現場のトレーニングに活用してくださるとうれしいです!

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