トレーニングの専門家、S&CコーチのSOMAです!
体作りのために筋トレをしているけど、「今のトレーニングで本当に大きくなるの?」「もっと効率よく筋肉を大きくしたい」と考えている人はたくさんいるのではないでしょうか?
自身がラグビーをしていた時も、自分がもっと大きかったらな~と思ったことはめちゃくちゃありました。
コンタクトのあるスポーツにおいて「フィジカルの強さは正義」
ということで今回は筋肥大のメカニズムについて、筋肉が大きくなる仕組みやそのために必要な刺激やトレーニング方法をわかりやすく解説していきます。
- フィジカルアップを目指して筋力トレーニングをしている人
- オフシーズンで体を大きくしたいアスリートや、その指導者・保護者の方
- 筋肥大についてメカニズムや効果的な方法を知りたい方
NSCA-CSCS、NASM-PES等のトレーニング資格を活かしながら、大学・高校ラグビー部、高校空手部のS&Cコーチとして活動しています。
現場での体験やエビデンスを踏まえながら、トレーニングや栄養に関する知識を共有していきます!
アスリートと筋肥大
筋肥大することによるスポーツへの影響
トレーニングをしているアスリートは、筋トレをしてムキムキになりたいと思う人もいれば、プレーの邪魔になるなら筋肉はつけたくないという人もいるかと思います。
「自分がやっている種目・ポジションにとって、筋肉が大きい方が有利なのか」をまずは考えてみましょう。
例えば、、、、
- 組手の場合、お相撲さんのように体が大きすぎると体重の重さもあり、打突速度が低下する。
もしかすると的が大きくなってしまうなどのデメリットもあるかもしれません。
ただぶつかった際やインパクトで相手を吹き飛ばせると試合運びが有利になるため筋力は必要です。 - 型の選手はビジュアルが演武の評価につながります。がっしりとした筋肉が演技をダイナミックに見せてくれたり、関節の安定性が増してメリハリのある動きを作ってくれます。
- コンタクトプレーが多いスポーツでは、選手の質量(体重)がものをいう。
タックルやscram、ヒットでは大きい選手、おもたい選手が有利な事が多いです。
身体が大きい方が相手に掴まれずらいことや、筋肉の肥大が骨折や外傷を防ぐといった怪我予防の観点でも筋肥大が必要だといえます。 - ただしスクラムハーフやクウォーターバック、スペシャルチームのパンターなどは身長や体重が低い選手も多く、激しいコンタクトより、競技スキルの巧みさが重要視される。
フォワードやラインマン程大きくなる必要性は少ないでしょう。
特定のアスリートを除けば、動作を鍛えた結果筋肉がおおきくなる。必要であれば一定期間、筋肥大トレーニングの時期を設けるという風に、競技力向上につながるトレーニングをすることが大切です。
ただ、筋の筋断面積がおおきければ筋力も大きくなるため、そのあたりの筋肉・筋肥大の構造についてはこの後解説していきます。
筋肥大のメカニズム
ここでは筋肉の構造を簡単に解説したうえで、筋肥大が起こるステップやその種類など、筋肥大について深掘りしていきます。
筋肥大とは何か
筋肉は運動やトレーニングによって負荷がかかると、そのストレスにより筋肉が分解され、筋繊維がこわされます。
こわされた筋肉に十分な栄養と休息を与えることで筋肉が修復する過程で太くなったり、筋繊維が新しく形成された結果、筋肉がおおきくなります。
これを筋肥大といいます。
筋肉の構造についてみていきます!
筋肉の構造
俗にいう筋肉とは、何千ものゴムのような筋繊維が束になったものを言います。
それぞえれの束が筋膜という膜につつまれていて、それがさらに束を作りそれが集まったものが筋肉です。
画像で確認してみましょう!
画像にはありませんが、筋肉の最小単位は「サルコメア」というもので、筋原線維はこのサルコメアの集合体となっています。
遅筋と速筋
また筋肉には遅筋と速筋という種類があります。
それぞれの特徴を見ていきましょう!
遅筋(TypeⅠ) | 速筋(TypeⅡa/TypeⅡx) | |
色 | 赤色 | 白色 |
筋繊維の太さ | 細い | 太い |
収縮速度 | 遅い | 早い |
持久力 | 高い | 低い |
得意な運動 | 有酸素運動などの持久的な運動 | 筋トレなどの瞬発的な運動 (無酸素運動) |
遅筋や速筋、その中でもTypeⅡa、TypeⅡxでそれぞれの違いはもっと細かくありますが、ここでは速筋の方が主に筋トレで太くなるんだなと理解いただければOKです!
サテライト細胞
サテライト細胞とは、筋肉が損傷した際にそれらを修復、再生する機能を持った細胞です。
サテライト細胞は筋肉の外側についていて、筋肉にストレスを与えると分裂します。
分裂、増殖した細胞が筋繊維に融合したり、新しい筋繊維を作ります。
筋肥大にとって重要なのがこのサテライト細胞です。
アスリートが目指すべき筋肥大~筋肥大の種類~
筋肉がおおきくなる=筋力が強くなるではありません。
アスリートは筋肉がおおきくなってもそれが機能的(大きい力を出せる、瞬発的に動かせる)でないと競技パフォーマンスにつながらないですよね。
筋肥大にも種類があり、ただ大きくするだけでなく、スポーツにつながる筋肥大を目指す必要があります。
ここでは筋肥大の種類について解説していきます!
筋原線維の肥大
筋原線維の肥大とは、サルコメアと筋原線維が肥大する事によって筋肉がおおきくなるということです。
これは機能的な筋肥大で、アスリートが目指すべき筋肥大はまさに筋原線維の肥大です。
筋小胞体の肥大
これは筋形質に液体などが蓄えられることで起こる筋肥大です。見た目に対しては影響を与えますが筋力がそれほど強くなることはありません。
過形成
これは全く新しい筋繊維が生まれて起こる筋肥大です。まだまだ研究データはすくないですが、長期にわたってトレーニングをした人は、そうでないひとよりも、筋原線維が多くより密集したフィラメントの集まりがあるとされています。
筋肥大に必要な刺激
筋肉を効果的に大きくするには、筋肉に適切な刺激をあたえることが重要です。おおきく分けて3つの要素が筋肥大に重要な刺激として挙げられます。
代謝ストレス
筋力トレーニングをすると、筋肉に負荷がかかり乳酸、リン酸、Hイオンなどの代謝産物が生成されます。
これらを代謝する過程で筋肥大に効果的とされるホルモン(テストステロン、インスリン様成長因子、成長ホルモン)の分泌を刺激し、筋肉の成長促します。
短いレストや低強度高回数のセットで大きな代謝ストレスがかかるとされていて、筋肥大にはこのような負荷のかけ方が有効とされていました。
ですが代謝ストレスを高めるために、短いレストでトレーニングをするよりも、しっかりとレストを取る方が、毎セットごとの挙上重量が上がるため、機械的ストレスが大きくなります。
近年では長いレストでも同様に筋肥大が起こるとされているため、代謝ストレス、機械的ストレスどちらもバランスよく負荷をかけるのが理想です。
機械的張力
筋肉を物理的に伸ばしたり、緊張させたりすることでかかる張力が、筋肥大にとって重要な刺激のひとつとされ、この機械的張力はメカニカルストレスともいわれています。
特に高重量を扱うトレーニングやエキセントリック収縮(筋肉が引きのばされながら力を発揮する)動作は、機械的張力を増加させ、筋肉にストレスを与えます。
スポーツをするアスリートは、最終的に筋力を強くしておおきなパワーを発揮しなければいけません。
筋肥大、筋力アップの観点から見てもどんどんとメカニカルストレスをかけていくことが重要だといえます。
筋損傷(筋のダメージ)
筋力トレーニングにより筋繊維が微細な損傷をうけると、身体はそれを修復しようとします。
この修復の過程で、筋肉は以前よりもつよく、太く成長します。
特に新しい刺激(普段とちがう種目や負荷の変化を加えた場合)をプログラムに組み込むことで筋損傷が効果的におこなわれ、筋肥大を促進してくれます。
ただ、アスリートにとってひどすぎる筋肉痛は、スキル練習や競技のパフォーマンスに悪い影響も出てしまう可能性があるため、計画的なプログラムが必要です。
筋肥大のためのトレーニングについて
筋肥大のメカニズムが理解できれば、それらを効率的におこなうためのプログラムの設計が重要です。
ここでは筋肥大を目的としたトレーニングに関して留意すべきポイントを解説していきます。
筋肥大のために考慮したいこと
漸進性過負荷
筋肉を成長させるためには、徐々に負荷をおおきくしていく必要があります。これは「漸進性過負荷」と呼ばれ、扱う重量をおもくしたり、セット数を増やしたりすることで筋肉が成長を続けられるようにする原則です。両足の種目を片足にしたり、自重種目に負荷を加えたりするのもこれにあたります。
インターバル
セット間の休憩時間も筋肥大に影響を与えます。短いインターバル(30秒~1分)では代謝ストレスが高くなる一方、長いインターバル(2~3分)は挙上重量や回数が増えやすくなるため、種目にや時期によって使い分けるのが効果的です。
セット数、レップ数、ボリューム
一般的に、筋肥大を目指す場合は中程度の重量(70~85%1RM)で8~12回の繰り返しを1~3セット行うのが推奨されています。重要やレップ数を増やしていくことが重要で、個人の目標や体力レベルに応じた調整が必要です。
トレーニング上級者は、40~80%1RMで後ほど説明するRPE7~10の回数を週に合計16セット以上こなすと効果的です
種目の選択
アスリートの場合は、多関節種目(スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなど)をメインとして動作・筋力を鍛えるとともに色々な筋肉を効率的に強化しましょう。
一方、単関節種目(アームカールやサイドレイズ)は特定の部位を鍛えたり、異なる刺激を与えるために効果的なので、補助種目として取り入れると筋肥大を促進してくれます!
RPE、RIRの考慮
トレーニングの強度管理には2つの指標が使われています。
- RPE(Rating of Perceived Exertion)
主観的運動強度のこといい、その運動がどれくらいきつかったかを6~20もしくは10~20の数値で表す。(Borg Scale) - RIR(Reps In Reserve)
あと何回反復できるかという数字を主観的に表したもの。1~10で設定され2RIRなどと表記する。
筋肥大を目指す場合はそれぞれ、RPE7~10程度、RIRは0~2程度が推奨されます。
ピリオダイゼーション
トレーニングプログラムは「ピリオダイゼーション」と呼ばれる期分けを利用することで、筋肥大と回復を効率よく勧められます。
特にアスリートの場合は大事な公式戦に最大のパフォーマンスをもってくるために、ずっと筋肥大のためのトレーニングをするわけにはいきません。
ある程度この時期までは筋肥大にフォーカスしてプログラムを作成するといった計画が必要で、トレーニングにおいては4週に1週、もしくは6週に1週、強度の低い週を定めると効果的にトレーニングを進められます。
新しい刺激を加えたい時におすすめな筋肥大トレーニング
高重量エキセントリックトレーニング
このトレーニングでは1RMの105%~130%の重量でエキセントリック局面を強調してトレーニングを実施します。
例えば、ベンチプレスでは「フォーストレップ法」という手法を活用します。
これは補助者がバーベルを上げるのをサポートし、回数を多く実施する方法です。
皆さんも「疲労で重りはあげられないけど、おろすのは耐えれる」という経験があると思います。
これは筋肉の特性上コンセントリック(上げる局面)よりもアイソメトリック(止めている局面)エキセントリック(おろしている局面)の方が重たい重量を扱えるというものです。
重たい重量を扱う、神経系に刺激を加えるという意味でもアスリートに有効なトレーニングなので、新しい刺激をいれたい時にぜひ実施してみてください。
スロートレーニング
スロートレーニングとは、ゆっくりとした動作でトレーニングを行う方法で、低い重量や急な動きがなく行えるので怪我のリスクも非常に少なく有効なトレーニングです。
スロートレーニングが筋肥大に有効な理由は、筋肉に長い時間張力をかけられるところにあります。
筋肉に力が入るとかたくなり、血管を圧迫します。
これにより血流が制限されるため、筋肉が低酸素状態になり、乳酸や無酸素性の代謝物が多量に蓄積し代謝ストレスを刺激します。
トレーニング初心者や怪我をした選手にも安全に行えるため、非常におすすめです!
筋肥大のために重要な筋トレ以外のこと
せっかくトレーニングをしても、筋肉の修復、回復の過程がうまくいっていないと筋肥大の効果は得られません。筋肥大を効果的に進めるためには、筋トレだけでなく、栄養、睡眠、休息が大切です。
詳しい内容は、それぞれをまた記事にまとめようと思うので簡単に解説していきます。
栄養
筋肥大において重要視してほしいのは、十分なたんぱく質摂取を心がけることです。
自身の体重1kgあたり、1.5g~2g程度の摂取が推奨されています。
また、三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)を中心にカロリーをしっかりと取り、1日の摂取カロリーが消費カロリーよりも多くする事で、バルクアップが進んでいきます。
睡眠
筋肉の修復、回復は主に睡眠時に行われています。
睡眠の質・時間が十分に確保できていないと、筋肥大の効果は大きく得られません。
寝る前のブルーライトをカットしたり、寝る直前の暴飲暴食をさけ、7~9時間程の睡眠時間を確保すると効率的に筋肉が修復されます。
休息
筋肥大の効果を最大限引き出すためには、休息、OFFの過ごし方にも気を遣うことが大切です。
筋肉の疲労を素早く解消するために、一日中だらだらと過ごすのではなく、入浴をしたり、ウォーキングなどの有酸素運動する事がおすすめです。
入浴やウォーキングは血流を促進する事で、体内の栄養を筋肉や全身に巡らせてくれます。よって損傷した筋肉も回復しやすくなり、筋肥大の効果が高まります。
まとめ
- アスリートにとって筋肥大は目的ではなく手段!
- 筋肥大のメカニズムとは、筋トレによって負荷・ストレスがかかった筋肉が回復の過程で太くなったり、新しく繊維がうまれ大きくなること!
- 筋肥大に必要な刺激は3つ機械的張力、代謝ストレス、筋のダメージ
- 筋肥大を効果的に進めるためにはセット数やRPEなど様々な要素に考慮してプログラムを組み徐々に負荷を高めていくことが大切!
- 筋トレだけしていても筋肉は大きくならない!栄養・睡眠・休息が大事!
最後までお読みいただきありがとうございました!
強度の低いトレーニングではなかなか筋肥大しずらいですが、従来から指導者から伝えらている「つぶれるまで追い込む」は完全に正しいとは言えません。中強度から高強度での筋力トレーニングでは、筋不全を伴うトレーニングとそうでないトレーニングの間に有意差はみられなかったという研究結果があります。
正しい知識を学ぶことで、安全かつ効果的にトレーニングを進めることができます。指導者もどんどんと情報をアップデートしていきましょう!
アスリートやスポーツを楽しみたい方に向け、オンラインや対面でのトレーニング指導を行っておりますのでご気軽にお問い合わせください。ブログやSNSでの質問もお待ちしております▼
参考文献
小笠原理紀.運動による骨格筋肥大メカニズム.日本農芸化学会.化学と生物Vol.59.No.8.2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/59/8/59_590710/_pdf
津田英一.筋力増強の理論.Jpn J Rehabil Med Vol. 54 No. 10 2017
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/10/54_740/_pdf
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