【熱中症ゼロ!】熱中症の症状とスポーツ現場の対策
梅雨が明けて気温がたかくなり、熱中症対策が必要な季節になってきました。
大きな事故を防いだり、パフォーマンスの低下を防ぐため、いざ対策をしようと思っても道具はあまりないし、選手に水をこまめに飲むように促すぐらいしかできていない….と悩んだことはありませんか。
アメリカのスポーツ事故の内、熱中症は死亡要因ワースト3位に来るほど危険な障害です。
そんな熱中症ですが2020東京オリンピック・パラリンピックでは、選手・スタッフ合わせて150人が症状を訴えるも死亡者は0人。
正しい知識を持った監督者がいれば、防ぐことができるものです。
せっかくトレーニングをしているのに、きちんと対策をしないばっかりに事故が起きてはもったいない!
そこで今回は、熱中症のに関する基礎知識と実際に指導現場で行っている熱中症対策、暑熱馴化について解説していきます。
現場で使用できる安価な熱中症対策グッズも紹介しているのでぜひ最後までお読みください!
NSCA‐CSCS、CROSSFIT‐Level1等のトレーニング資格を活かしながら大学、高校ラグビー部のS&Cコーチとして活動しています。
現場での体験やエビデンスを踏まえながら、トレーニングや栄養に関する知識を共有していきます!
熱中症の4つの分類
熱中症とは、暑熱環境や熱が原因で起こる障害の総称です。
障害は4つに分類されていて、これらは独立したものではなく、時間経過とともに重症度が悪化することもあるので注意が必要です。
熱失神
熱失神は、比較的重症度が低くⅠ度に分類される熱中症です。
メカニズム
暑熱環境や熱で体温が上昇すると、発汗で熱を逃がすため全身の血管は拡張されます。
血管が拡張、血液から汗が分泌されることで全身をめぐる血液の量は減少するんです。
血液の量が減少すると血圧は低下、結果的に脳への血流も減少することで上記のような症状を招きます。
そのため、適度な水分補給や休息をとり体温の上昇をコントロールすることが重要です
熱けいれん
熱けいれんは、比較的重症度が低く熱失神と同様にⅠ度に分類される熱中症です。
メカニズム
血液から出ていく汗には水分と同時に電解質(イオン)が含まれているのはみなさんもご存知ですよね。
電解質(イオン)の主な成分はナトリウムつまり塩分です。
塩分には筋肉の収縮を調節する機能があるため、不足することで上記の症状が発生します。
なので水ばかりを摂取するのではなく、スポーツドリンク等を活用し電解質を補給することが大切です。
熱疲労
メカニズム
汗をかいて体内の水分、血液を失ったにもかかわらず十分な水分補給を行わないと体は脱水状態になります。
この脱水状態が続き、熱が体内にこもるのが原因です。
体内の温度が高く水分補給ができていれば、永遠に汗が出続けるわけではありません。
汗腺が疲労し発汗がスムーズでなくなると、身体に熱がこもりやすくなります。
熱疲労は熱射病の前段階ともいえ、非常に危険な状態です。
熱射病との差は中枢神経症状が無いこと、直腸温が40.5℃未満ということで判断ができます。
熱射病
メカニズム
熱疲労がさらに重症化した状態をいいます。
体温(直腸温)が以上に上昇し40.5を超えた状態で中枢神経症状があります。
発汗は止まりますが、肌は汗ばんだ状態、全身の臓器にも障害が発生します。
最悪死に至るケースもあり、すぐに救急車の要請が必要になります。
熱中症になるそもそもの原因
運動中に起こる熱中症の要因は主に、環境、体、行動が原因になってきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう!
環境
熱中症のリスクが高まる環境要因は気温の高さだけではありません。
下記のような条件が重なるとより、熱中症発症の可能性が高まります。
- 日差しが強く気温の高い環境
- 湿度が高くじめじめとした天気
- 熱を逃がす風が弱い日
他にも、夏の暑い日に締め切った室内などはとても危険ですね!
WBGTとは
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。 暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid922.html
体
熱中症は、その日の健康状態や年齢、持病なども要因の一つになります。
特に注意が必要なのはこんな人や、こんな状態
- 高齢者や乳幼児、肥満体型の方
- 栄養不足、水分不足
- 睡眠不足や疲れが溜まっている時
- 糖尿病や精神疾患などの持病がある
普段から、食事や生活習慣の意識を高めておくことも立派な対策だと言えます!
行動
暑熱環境でのトレーニングでは、監督者の方が細心の注意を払いながら、運動を進めることが重要です。
- 長時間の激しい運動
- 水分補給が少ない
- 慣れていない環境下での運動
どんなスポーツ現場でも安全が第一、正しい知識を持ったうえで無理をしすぎないことが大切!
スポーツ現場における熱中症の対策
暑熱順化と暑熱馴化
実は「しょねつじゅんか」には「暑熱馴化」と「暑熱順化」の2種類があるって知っていましたか?
暑熱順化はいわゆる環境制御室などで暑熱環境を作りだし、そこで暑さになれる方法を言います。
環境制御室とは人工的に高所環境(マスクやトレッドミル)や暑熱環境をつくり環境適応を目的とする施設のことです。
暑熱馴化は自然の暑熱環境で、少しずつトレーニング強度や運動時間を伸ばし体を慣れさせることをいいます。
暑熱馴化が進むと発汗量や皮膚の血流量が増加し熱放散がしやすい体に変化していき熱が体にこもりにくくなっていきます。
日本のほとんどのスポーツ現場では、「暑熱馴化」が一般的ではないでしょうか。
中高生の部活動やスポーツ現場で行う暑熱馴化の方法について具体的に解説していきます。
暑熱馴化の方法
暑熱馴化には5日間~2週間程度の期間が必要とされています。
慣れない環境下での激しい運動は熱中症のリスクが高まることから、ボリュームや強度は徐々に高めていくことが重要です。
またせっかく暑さに慣れてきても、何日間も家から出なかったり、暑熱環境での運動をやめてしまうと、その効果はなくなってしまいます。
指導する現場では下記のような方法、ポイントを意識しながら、暑熱馴化を進めています。
- 早朝や夕方の練習から、気温の高い日中に時間帯を変更
- 初期は30分~1時間、徐々に練習時間を伸ばしていく
- トレーニングボリューム、強度もはじめは低めに設定
- こまめな水分補給をとる
- アイスバスやアイスタオル、冷房の効いた部屋等をあらかじめ準備しておく
これらはあくまでも日常的に運動を行っている選手に対して、行っている暑熱馴化の方法です。
運動習慣のない方はまず簡単なウォーキングやジョギングから!
さらに暑い日中を避けてまずは運動になれることを優先していきましょう!
サウナや入浴などで汗をかくことも立派な暑熱馴化です。
ただ本格的に行うには監督者がいないと危険なのであまりおすすめはしません
スポーツ現場で使える対策グッズ
体温を素早く下げるには、体の「外部体温」と「内部体温」の両方にアプローチするとより効果的です。
熱中症対策も備えあれば患いなし!
ということで指導先では様々な熱中症対策グッズを駆使して熱中症を予防、暑熱環境でのパフォーマンスアップを図っています。
これから紹介するものは実際に現場で使用しているものです。
簡単に用意できるものや比較的安価で購入できるものもあるのでぜひ参考にしてください!
外部冷却
アイスバス・・・体がまるまる入るようなタブが理想です、空気で膨らませるような簡易プールでも可
アイスタオル・・・フェイスタオルやバスタオルなどを氷水に漬け冷やしてから使用します。
サーキュレーター(扇風機)・・・熱された体に風を送り、熱放散を手助けします。
紙コップ氷・・・紙コップに水を入れ凍らせておきます。アイシングとして活用できます。
アンダーラップ氷漬け・・・氷漬けにしたアンダーラップをふくらはぎや太腿に巻き付け足を冷やします
内部冷却
アイススラリー
アイススラリーとは、
https://pocarisweat.jp/products/iceslurry/
細かい氷の粒子が液体に分散した状態の飲料で、流動性が高いことから通常の氷よりも体の内部を効率よく冷やすといわれています。
水
5℃~15℃前後の水が理想、約2%の水を失うとパフォーマンスが下がるとも言われています。
練習前と練習後に体重を図ってチェックすることが理想的です。
熱中症対策グッズの実用例
様々な熱中症対策グッズを紹介しましたが、フィールドスポーツの試合をテーマとして実用例を考えてみました!
試合前やウォーミングアップ中
運動前にアイススラリーの摂取やこまめな水分補給を行う。
電解質(イオン)を含んだスポーツドリンクなども並行して飲む。
ハーフタイム
アイスタオルやサーキュレーターを使用して速やかに体温を下げる、氷漬けアンダーラップや紙コップ氷も選手の状態や状況に合わせて使用!
ここでアイススラリーを摂取するのもおすすめ!
サッカーのハーフタイムにクーリングを行った研究では、試合後半の走行距離低下を防いでいます。
笠原 政志, 西園 聡史, 西山 侑汰, 山本 利春, 大学サッカー選手におけるアイスアンダーラップ,アイスタオル,冷水摂取を用いたハーフタイム中のクーリングが後半の運動パフォーマンスに及ぼす影響, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 2018-2019, 4 巻, 2 号, p. 163-169, 公開日 2019/11/13, Online ISSN 2433-572X, Print ISSN 2432-6623, https://doi.org/10.24692/jsatj.4.2_163, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/4/2/4_163/_article/-char/ja, 抄録:
試合後
速やかにアイスバスにドボン(笑)
素早く涼しい部屋等に入れれば理想ですね。
まとめ
- 熱中症には4つの分類があり、低ナトリウム血症にも注意が必要
- 熱中症の要因は「環境・体・行動」
- スポーツ現場の熱中症対策では暑熱馴化、徐々にレベルアップがポイント
- 様々なグッズを駆使して体の外部冷却と内部冷却を!
最後までお読みいただきありがとうございました。
熱中症は最悪死に至ることもあり、スポーツ現場では対策が非常に重要です。
ただ特段難しい方法をとることもなく、正しい知識を持ったうえで素早く対応することができれば最悪の事故を防ぐことができます。
予防・対策の意識を高め、自分自身もクライアント様も、熱中症ゼロを一緒に目指していきましょう!
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